北欧雑貨買い付け(ざつようがかり編)-その10
2009.10.16 Friday
ストックホルム→コペンハーゲン
北欧雑貨買い付け第6日目(5月8日)
4:30起床。
5:30にはチェックアウトしてホテルを発ちます。
マグライナーに3箱の荷物とスーツケース。まるで行商です。
約30分ほどで中央駅に着きましたが、いつもより遠く感じるのは気のせいでしょうか?
晴天だったのがせめてもの救いです。
中央駅に着いたら、とりあえずモーニングコーヒーです。
天井の高い、異国情緒たっぷりの駅舎でいただくコーヒーはまた別です。
一応、電光案内板で列車の時間も調べておきましょう。
Kopenhamn間違いないようです。
Why横に/Malmoと書かれているの?
まっ細かいことは気にしない、気にしない。
余裕をもって行動、さらに事前確認。これお仕事の基本です。
安心したら、眠気が襲ってきました。
天井の高いアーチ型の屋根の下にホームがあって、私たちの乗るX2000が微笑んでます。
そのままホームを歩いて行きます。
昔の白黒映画のようです。
とても情緒があります。
スウェーデンからデンマークへ時速200kmで疾走する国際列車。
こんな旅は、会社をリタイヤしてから、神様からのご褒美だと思っていたのに・・・。
夢が実現してしまいました。
込み上げてくる気持ちを抑えられません。
ハナマルキじゃないけど、「おかあさ〜ん!」と叫びたいくらい。
何か熱い心の汗が頬を伝って・・・流れてきます。
視界が滲んできました・・・。
・・・・・。
・・・・・。
(あなた、あなた、起きなさいってば!こら! )
おっと、あやうく眠ってしまうところでした。
いかん、いかん。
さあ、改札しましょう。
さてと・・・、んっ(!?)
様子が変です。
ホームがない? ではないですか!
いきなり地下通路に降りる階段。
そしてまた階段を上がって。ホームはその先です。
想定外です。
こんなことなら早く改札すればよかった。
後悔しててもはじまりません。
怖いけど、マグライナーのお尻を下にして降りるしかなさそうです。
1段降りたら、そのままマグライナーに引っ張られ、階段下に叩きつけられる恐怖が駆け巡ります。
きっとスキージャンプの選手はこんな気持ちなんだと思います。
人間とは不思議なものです。
普段は思い出しもしない遠い過去に忘却した記憶が、何かをきっかけに鮮やかによみがえるものです。
少年の頃、初めてV坂(*1)に立った時を思い出しました。
-------------------------------------------------------
*1V坂: 川崎市の西三田団地付近の浄水場横にある坂。断面から見るとV字になっているところから子供たちの間でそう呼ばれている。子供たちの間での呼称で正式名ではない。
昔は砂利道で、長沢側のトップからノーブレーキで一気に下り、その勢いで西三田団地側のトップへ上れた者だけが男として認められ、小中学生の間で流行った危険な遊び。というか、大人へなるための儀式。
しかし、坂の途中にはいくつもの凸凹があって、完走できるものは少なく、大概は怖気付いて、ブレーキをかけて転倒するかコントロールを失って転倒した。
いづれにしても、地球に叩きつけられ、全身はきな粉状態で、足や腕から黒蜜のような血を流すことになる。-------------------------------------------------------
足元を探るように階段を降りていきます。
ガタン、ガタンと一段ごとに車輪を止めます。
それでも積み上げた段ボール箱への衝撃は尋常ではありません。
でも、国際郵便で投げられても割れないくらいの養生をしたので気は楽です。
段ボールで中仕切りの養生と新聞紙の養生がよかったです。
ガツンガツンいきます。
やっとの思いで地下通路へ降りると、ホームへ上がるエレベーター発見です。
日本でも今やバリアフリーの時代、福祉先進国のスウェーデンに無い訳がありません。
二人で安堵します。
しか〜し、エレベーターのボタンを押しても来ません!
故障(!?)
上で止められているのかな?
出発時間も迫っているので調べる余裕もありません。
しょうがないので、中央通路を再度横断しようとしたその時、郊外からの通勤電車が到着、人の波が押し寄せます。
通路はJR新宿駅午前6:30状態。人に当たらないよう気をつけてマグライナーを牽いていきます。
ホームへ上がる階段を前にして、どうしたものか二人で思案します。
出発前、自宅周辺で行った予行練習では、20kgの荷物を積んだマグライナーの階段上げがいかに大変かを知ってます。
今、我々が積んでいるのは倍の40kg。マグライナーの自重も入れると50kg近くです。
一旦、荷物をセパレートにして1個ずつ運ぼうかとも思いましたが、時間がありません。
あれほど余裕をもって来たのに、思いもよらない事態です。
残る手は一つ。そのまま引きずり上げるだけです。
箱の中は万全の養生をしておきました。あとはその力が私にあるかです。
大丈夫。多少ガタはきてますが、昔、山登りで鍛えあげたからだです。
(後でわかったことですが、他にホームへ行く方法があったようです。事前確認はホント大事です)
なんとか間に合いました。
出発前に列車の前で記念撮影するつもりでしたが断念。
最後まで慌ただしいストックホルム。デンマークでは、少しくらい観光らしいことが出来るのでしょうか。
いえ、忘れてました。お仕事です、オシゴト。
ホームには、鈍い銀色の車体のX2000が、機材の積み込みも終わり、出発の合図を待っていました。
列車のデッキは、段差が2段ありましたが、さっきの階段を思えばどってことありません。
まかしときっ!です。
女性の車掌が、何かもの言いたげに近づいてきます。
きっとこの荷物のことです。
自転車は積めるけど、大きな箱を3つも積んだキャリアカーは、絶対断られるに決まってます。
どうしようか、あれこれ思いは頭の中を旋回しますが、名案は浮かびません。
車輪を外して両肩に通すベルトをつければ背負子に見えるかも。
最近は見かけなくなったけど、子供のころ、伊豆の伊東から来る行商のオバサンが自分の背丈以上あるんじゃないかと思われる海産物をたくさん背負ってきていた。
そんなふうに見えなくもないけど、ちょっと苦しいかな?
結局、彼女は、私たちの荷物を心配してくれて、客車だとスペースがないので、食堂車に乗せなさいとアドバイスしてくれたのです。
「但し、マルモでチェンジよ」と念をおされました。
何故チェンジなのか、発車前の慌ただしい中での会話、一部スウェーデン語もはいっていたので、意味不明でしたが、とにかく無事荷物とともに乗れました。
マグライナーを食堂車に置き、最近治安が悪くなっているので、一応自転車用ワイヤーロックで固定します。
客車へ移動し、さて我々のシートは?
同じ並びでシートを予約したのに、前後になってます。
このへんはやはり外国です。
しかたなく、隣のビジネスマンらしき男性にシートを代わっていただきました。
こういう交渉は店長の役です。
店長は人差し指を立てて、
「Excuse me,・・・alone?」というと
彼は「No problem!」と言って快く代わってくれました。
短い会話ですが、店長の隣に私が立ってれば、何を言わんとしているのか、誰だってわかります。
定刻6:21。
X2000は滑るようにストックホルム中央駅を発車します。
Railway Story のサウンド・トラック銀河鉄道の朝の音楽が聞こえてきそうな朝です。
X2000のチケットです
新幹線N700系と同じように、シートの横に電源が用意されていて、ビジネスマンは一斉にノートパソコンを開きます。
私もエクセルでつくった買い付けリストを更新します。
お仕事オシゴト。
店長は?
もういません。きっと食堂車にいったんでしょう。
(食堂車ではスウェーデンクローネとデンマーククローネしか使えないので要注意です。)
キーボードを打つ手を休め、しばし、車窓に広がる景色に目を向けます。
北欧の空の下、丘には一面たんぽぽが咲き、何処までも続いています・・・。
こんな景色を見てみたいと思ったのは、いつ頃からだったでしょう。
今、眼の前にそれが広がっている。
夢を見ているみたいです。
込み上げてくる感情が抑えられません。
ふと前を見れば、シートの間から美女が・・・。
心のトキメキが抑えられません。
菜の花畑に風車です
一気にに南下し、マルモに着いたのは、10:45頃。
スウェーデン人らしきおばあさんが「ここはもう夏なのよ」と、何か彼女にしかわからない感情を込めて、私たちに話してくれました。
日本から来た我々には、春の景色にしか見えないけど、陽差しはたしかに初夏です。
新緑の緑がだいぶ濃いです。
冬の長い北欧の人々にとって、この季節がどれほど待ち遠しいか。
北緯59°のストックホルムから北緯55°のマルモへ。
だいぶ南下しましたが、まだ札幌(北緯42°)より北に位置します。
それでも暖かいのは、メキシコ湾暖流の恩恵らしいです。
車掌に言われたように、食堂車からマグライナーを客車へ移動させます。
しかし、どうも様子が変です。みんな下車してしまいました。
ホームを歩いている男性の車掌をつかまえて聞いてみます。
この列車はマルモ止まり。だから乗り換えよ。
早く言いなさいって。
「マルモでコペンハーゲン行きの列車にチェンジよ」
ストックホルム中央駅で女性車掌の言った「チェンジ」はそういう意味でした。
チケットに表示されていたMalmo/kopenhamnも、そういう意味だったらしいです。
慌てて大きな荷物を列車から降ろします。
コペンハーゲンへ行く乗客は既に隣のホームへ移動してます。
焦っていると、構内アナウンスで、今降りたホームへ入れ替えで列車が入ってくるとのこと。
一団はまた引き返してきます。
おいおい。早く言いなさいって。
このへんは、大らかな外国です。
暫くすると、スウェーデン国鉄のインターシティが入線してきました。
列車をフェリーにそのまま載せ、また連結するときに車体のショックを柔げるためにつけた吸収材が、かつて、フェリーで往来していた時代の面影を残しています。
さあ、いよいよ国境越えです。
店長が何度も行って、勝手知ったるデンマークです。
目をつむっても歩けるくらい熟知したコペンハーゲンです。縦横無尽に市内を引きずり回されることは必至です。
覚悟しておきましょ。
全長約15kmのオスアン海峡です。
インターシティが疾走していきます。
大きな地図で見る
ここを越えれば、約30分ほどでコペンハーゲン。
インターシティの速度が徐々に落ちてきて、幾つもの線路を縫って行きます。
コペンハーゲンの古いレンガの建物に歴史を感じます。
11:40、予定より少し遅れてのコペンハーゲン到着です。
今度こそエスカレーターでコンコースへ上がります。
材木を曲げて作ったアーチ状の屋根。高窓にはステンドグラスが装飾され、見事な駅舎です。
コンコースの中央には両替所があって、国際列車発着駅らしい貫禄です。
「さてと、ランチタイムも近いので、何か食べましょか?」
「先に荷物の発送でしょ?」(ピシャッ!)
郵便局がうまい具合に駅舎の中にありました。
送付状のフォームは各国共通なので、記入に問題はありませんでしたが、支払い方法でひと悶着です。
スウェーデンではカード支払いがOKだったのにデンマークはNo!です。
どうもデンマークで発行しているカードならOKということなんですが、要は外国人はダメよということらしいです。
その上、ドルもだめ。
このへんの郵便事情はどうなんでしょうか?
特にヨーロッパの情報がほしいです。どなたかコメントいただけると有難いです。
さて、身も軽くなったところで、ランチかな?と期待していたら、ホテル直行です。
駅から約5分の所にあるCab Inn Cityです。
アーリィチェックインができるそうです。さすが店長、完璧です。
もう店長の頭の中には、コペンでのタイムテーブルがビッシリと詰まっていることでしょう。
駅の目の前にはチボリ公園です。
公園と言っても遊園地です。
おとぎの国デンマークです。
大きな地図で見る
ホテルへ荷物を置くと、それまでマグライナーを牽引していた私は、今度は店長に牽引されていきます。
凄い馬力です。
大きな時計塔、建物には国旗がなびいていてスウェーデンとはまた違った雰囲気です。
市庁舎前広場で店長イチオシのホットドッグをいただきます。
「デンマークでホットドッグなんて聞いたことがないし、第一、ホットドッグなんてどこも・・・ん? うんっまっ!!」
隣国がソーセージのドイツだからでしょうか?
養豚が盛んなデンマークだからでしょうか?
理由はわかりませんが、オススメです。
ストロイエ。
有名な通りのようで、多くの観光客で賑わってます。
ロイヤルコペンハーゲンのお店やちょっと裏通りに入るとブラシ屋さんとか雑貨屋さんがあって、目がはなせません。
しかし、個人でやっている所はほとんどクローズ。
イスラエル広場を通って、川向うの骨董通りも、もしやクローズ?
急ぎ足で行ってみたら当たりです。
平日だと思っていたらどうも祝日のようです。
ガイドブックにも載ってました。
祈祷日(移動祝祭日なので要注意)です。
したがって、本日の買い付けは不可能と判断。
次回へ先送りとなりました。
再びストロイエへ戻り、空のマグライナーを牽いて、しばし散策です。
翌日は帰国日ですが、遅い出発なので、朝の蚤の市から始まってIrmaでの買い付け、そして郵便局からの発送と一連の流れがスムーズに運ぶよう、事前に場所を確認しておきます。
万が一買い付けた商品が発送出来ないと、高額な超過料金を払って持ち帰りともなりかねないですからね。
ここへきて、二人ともドッと疲れがでてきたようです。やっと自由時間になったというのに、気が抜けてしまったようです。
チボリ公園から聞こえてくる歓声をよそに、ひとまずホテルへ戻ります。
16:20。
ホテルで夕寝です・・・。
20:30頃起きて、夜の街へ出てみます。
といっても、20:54でこの明るさです。
北欧最後の夜だというのに、また市庁舎前広場へ行ってホットドッグです。
結局この日は収穫ゼロ。
明日に賭けましょう。
(つづく・・・)
北欧雑貨買い付け第6日目(5月8日)
4:30起床。
5:30にはチェックアウトしてホテルを発ちます。
マグライナーに3箱の荷物とスーツケース。まるで行商です。
約30分ほどで中央駅に着きましたが、いつもより遠く感じるのは気のせいでしょうか?
晴天だったのがせめてもの救いです。
中央駅に着いたら、とりあえずモーニングコーヒーです。
天井の高い、異国情緒たっぷりの駅舎でいただくコーヒーはまた別です。
一応、電光案内板で列車の時間も調べておきましょう。
Kopenhamn間違いないようです。
Why横に/Malmoと書かれているの?
まっ細かいことは気にしない、気にしない。
余裕をもって行動、さらに事前確認。これお仕事の基本です。
安心したら、眠気が襲ってきました。
天井の高いアーチ型の屋根の下にホームがあって、私たちの乗るX2000が微笑んでます。
そのままホームを歩いて行きます。
昔の白黒映画のようです。
とても情緒があります。
スウェーデンからデンマークへ時速200kmで疾走する国際列車。
こんな旅は、会社をリタイヤしてから、神様からのご褒美だと思っていたのに・・・。
夢が実現してしまいました。
込み上げてくる気持ちを抑えられません。
ハナマルキじゃないけど、「おかあさ〜ん!」と叫びたいくらい。
何か熱い心の汗が頬を伝って・・・流れてきます。
視界が滲んできました・・・。
・・・・・。
・・・・・。
(あなた、あなた、起きなさいってば!こら! )
おっと、あやうく眠ってしまうところでした。
いかん、いかん。
さあ、改札しましょう。
さてと・・・、んっ(!?)
様子が変です。
ホームがない? ではないですか!
いきなり地下通路に降りる階段。
そしてまた階段を上がって。ホームはその先です。
想定外です。
こんなことなら早く改札すればよかった。
後悔しててもはじまりません。
怖いけど、マグライナーのお尻を下にして降りるしかなさそうです。
1段降りたら、そのままマグライナーに引っ張られ、階段下に叩きつけられる恐怖が駆け巡ります。
きっとスキージャンプの選手はこんな気持ちなんだと思います。
人間とは不思議なものです。
普段は思い出しもしない遠い過去に忘却した記憶が、何かをきっかけに鮮やかによみがえるものです。
少年の頃、初めてV坂(*1)に立った時を思い出しました。
-------------------------------------------------------
*1V坂: 川崎市の西三田団地付近の浄水場横にある坂。断面から見るとV字になっているところから子供たちの間でそう呼ばれている。子供たちの間での呼称で正式名ではない。
昔は砂利道で、長沢側のトップからノーブレーキで一気に下り、その勢いで西三田団地側のトップへ上れた者だけが男として認められ、小中学生の間で流行った危険な遊び。というか、大人へなるための儀式。
しかし、坂の途中にはいくつもの凸凹があって、完走できるものは少なく、大概は怖気付いて、ブレーキをかけて転倒するかコントロールを失って転倒した。
いづれにしても、地球に叩きつけられ、全身はきな粉状態で、足や腕から黒蜜のような血を流すことになる。-------------------------------------------------------
足元を探るように階段を降りていきます。
ガタン、ガタンと一段ごとに車輪を止めます。
それでも積み上げた段ボール箱への衝撃は尋常ではありません。
でも、国際郵便で投げられても割れないくらいの養生をしたので気は楽です。
段ボールで中仕切りの養生と新聞紙の養生がよかったです。
ガツンガツンいきます。
やっとの思いで地下通路へ降りると、ホームへ上がるエレベーター発見です。
日本でも今やバリアフリーの時代、福祉先進国のスウェーデンに無い訳がありません。
二人で安堵します。
しか〜し、エレベーターのボタンを押しても来ません!
故障(!?)
上で止められているのかな?
出発時間も迫っているので調べる余裕もありません。
しょうがないので、中央通路を再度横断しようとしたその時、郊外からの通勤電車が到着、人の波が押し寄せます。
通路はJR新宿駅午前6:30状態。人に当たらないよう気をつけてマグライナーを牽いていきます。
ホームへ上がる階段を前にして、どうしたものか二人で思案します。
出発前、自宅周辺で行った予行練習では、20kgの荷物を積んだマグライナーの階段上げがいかに大変かを知ってます。
今、我々が積んでいるのは倍の40kg。マグライナーの自重も入れると50kg近くです。
一旦、荷物をセパレートにして1個ずつ運ぼうかとも思いましたが、時間がありません。
あれほど余裕をもって来たのに、思いもよらない事態です。
残る手は一つ。そのまま引きずり上げるだけです。
箱の中は万全の養生をしておきました。あとはその力が私にあるかです。
大丈夫。多少ガタはきてますが、昔、山登りで鍛えあげたからだです。
(後でわかったことですが、他にホームへ行く方法があったようです。事前確認はホント大事です)
なんとか間に合いました。
出発前に列車の前で記念撮影するつもりでしたが断念。
最後まで慌ただしいストックホルム。デンマークでは、少しくらい観光らしいことが出来るのでしょうか。
いえ、忘れてました。お仕事です、オシゴト。
ホームには、鈍い銀色の車体のX2000が、機材の積み込みも終わり、出発の合図を待っていました。
列車のデッキは、段差が2段ありましたが、さっきの階段を思えばどってことありません。
まかしときっ!です。
女性の車掌が、何かもの言いたげに近づいてきます。
きっとこの荷物のことです。
自転車は積めるけど、大きな箱を3つも積んだキャリアカーは、絶対断られるに決まってます。
どうしようか、あれこれ思いは頭の中を旋回しますが、名案は浮かびません。
車輪を外して両肩に通すベルトをつければ背負子に見えるかも。
最近は見かけなくなったけど、子供のころ、伊豆の伊東から来る行商のオバサンが自分の背丈以上あるんじゃないかと思われる海産物をたくさん背負ってきていた。
そんなふうに見えなくもないけど、ちょっと苦しいかな?
結局、彼女は、私たちの荷物を心配してくれて、客車だとスペースがないので、食堂車に乗せなさいとアドバイスしてくれたのです。
「但し、マルモでチェンジよ」と念をおされました。
何故チェンジなのか、発車前の慌ただしい中での会話、一部スウェーデン語もはいっていたので、意味不明でしたが、とにかく無事荷物とともに乗れました。
マグライナーを食堂車に置き、最近治安が悪くなっているので、一応自転車用ワイヤーロックで固定します。
客車へ移動し、さて我々のシートは?
同じ並びでシートを予約したのに、前後になってます。
このへんはやはり外国です。
しかたなく、隣のビジネスマンらしき男性にシートを代わっていただきました。
こういう交渉は店長の役です。
店長は人差し指を立てて、
「Excuse me,・・・alone?」というと
彼は「No problem!」と言って快く代わってくれました。
短い会話ですが、店長の隣に私が立ってれば、何を言わんとしているのか、誰だってわかります。
定刻6:21。
X2000は滑るようにストックホルム中央駅を発車します。
Railway Story のサウンド・トラック銀河鉄道の朝の音楽が聞こえてきそうな朝です。
X2000のチケットです
新幹線N700系と同じように、シートの横に電源が用意されていて、ビジネスマンは一斉にノートパソコンを開きます。
私もエクセルでつくった買い付けリストを更新します。
お仕事オシゴト。
店長は?
もういません。きっと食堂車にいったんでしょう。
(食堂車ではスウェーデンクローネとデンマーククローネしか使えないので要注意です。)
キーボードを打つ手を休め、しばし、車窓に広がる景色に目を向けます。
北欧の空の下、丘には一面たんぽぽが咲き、何処までも続いています・・・。
こんな景色を見てみたいと思ったのは、いつ頃からだったでしょう。
今、眼の前にそれが広がっている。
夢を見ているみたいです。
込み上げてくる感情が抑えられません。
ふと前を見れば、シートの間から美女が・・・。
心のトキメキが抑えられません。
菜の花畑に風車です
一気にに南下し、マルモに着いたのは、10:45頃。
スウェーデン人らしきおばあさんが「ここはもう夏なのよ」と、何か彼女にしかわからない感情を込めて、私たちに話してくれました。
日本から来た我々には、春の景色にしか見えないけど、陽差しはたしかに初夏です。
新緑の緑がだいぶ濃いです。
冬の長い北欧の人々にとって、この季節がどれほど待ち遠しいか。
北緯59°のストックホルムから北緯55°のマルモへ。
だいぶ南下しましたが、まだ札幌(北緯42°)より北に位置します。
それでも暖かいのは、メキシコ湾暖流の恩恵らしいです。
車掌に言われたように、食堂車からマグライナーを客車へ移動させます。
しかし、どうも様子が変です。みんな下車してしまいました。
ホームを歩いている男性の車掌をつかまえて聞いてみます。
この列車はマルモ止まり。だから乗り換えよ。
早く言いなさいって。
「マルモでコペンハーゲン行きの列車にチェンジよ」
ストックホルム中央駅で女性車掌の言った「チェンジ」はそういう意味でした。
チケットに表示されていたMalmo/kopenhamnも、そういう意味だったらしいです。
慌てて大きな荷物を列車から降ろします。
コペンハーゲンへ行く乗客は既に隣のホームへ移動してます。
焦っていると、構内アナウンスで、今降りたホームへ入れ替えで列車が入ってくるとのこと。
一団はまた引き返してきます。
おいおい。早く言いなさいって。
このへんは、大らかな外国です。
暫くすると、スウェーデン国鉄のインターシティが入線してきました。
列車をフェリーにそのまま載せ、また連結するときに車体のショックを柔げるためにつけた吸収材が、かつて、フェリーで往来していた時代の面影を残しています。
さあ、いよいよ国境越えです。
店長が何度も行って、勝手知ったるデンマークです。
目をつむっても歩けるくらい熟知したコペンハーゲンです。縦横無尽に市内を引きずり回されることは必至です。
覚悟しておきましょ。
全長約15kmのオスアン海峡です。
インターシティが疾走していきます。
大きな地図で見る
ここを越えれば、約30分ほどでコペンハーゲン。
インターシティの速度が徐々に落ちてきて、幾つもの線路を縫って行きます。
コペンハーゲンの古いレンガの建物に歴史を感じます。
11:40、予定より少し遅れてのコペンハーゲン到着です。
今度こそエスカレーターでコンコースへ上がります。
材木を曲げて作ったアーチ状の屋根。高窓にはステンドグラスが装飾され、見事な駅舎です。
コンコースの中央には両替所があって、国際列車発着駅らしい貫禄です。
「さてと、ランチタイムも近いので、何か食べましょか?」
「先に荷物の発送でしょ?」(ピシャッ!)
郵便局がうまい具合に駅舎の中にありました。
送付状のフォームは各国共通なので、記入に問題はありませんでしたが、支払い方法でひと悶着です。
スウェーデンではカード支払いがOKだったのにデンマークはNo!です。
どうもデンマークで発行しているカードならOKということなんですが、要は外国人はダメよということらしいです。
その上、ドルもだめ。
このへんの郵便事情はどうなんでしょうか?
特にヨーロッパの情報がほしいです。どなたかコメントいただけると有難いです。
さて、身も軽くなったところで、ランチかな?と期待していたら、ホテル直行です。
駅から約5分の所にあるCab Inn Cityです。
アーリィチェックインができるそうです。さすが店長、完璧です。
もう店長の頭の中には、コペンでのタイムテーブルがビッシリと詰まっていることでしょう。
駅の目の前にはチボリ公園です。
公園と言っても遊園地です。
おとぎの国デンマークです。
大きな地図で見る
ホテルへ荷物を置くと、それまでマグライナーを牽引していた私は、今度は店長に牽引されていきます。
凄い馬力です。
大きな時計塔、建物には国旗がなびいていてスウェーデンとはまた違った雰囲気です。
市庁舎前広場で店長イチオシのホットドッグをいただきます。
「デンマークでホットドッグなんて聞いたことがないし、第一、ホットドッグなんてどこも・・・ん? うんっまっ!!」
隣国がソーセージのドイツだからでしょうか?
養豚が盛んなデンマークだからでしょうか?
理由はわかりませんが、オススメです。
ストロイエ。
有名な通りのようで、多くの観光客で賑わってます。
ロイヤルコペンハーゲンのお店やちょっと裏通りに入るとブラシ屋さんとか雑貨屋さんがあって、目がはなせません。
しかし、個人でやっている所はほとんどクローズ。
イスラエル広場を通って、川向うの骨董通りも、もしやクローズ?
急ぎ足で行ってみたら当たりです。
平日だと思っていたらどうも祝日のようです。
ガイドブックにも載ってました。
祈祷日(移動祝祭日なので要注意)です。
したがって、本日の買い付けは不可能と判断。
次回へ先送りとなりました。
再びストロイエへ戻り、空のマグライナーを牽いて、しばし散策です。
翌日は帰国日ですが、遅い出発なので、朝の蚤の市から始まってIrmaでの買い付け、そして郵便局からの発送と一連の流れがスムーズに運ぶよう、事前に場所を確認しておきます。
万が一買い付けた商品が発送出来ないと、高額な超過料金を払って持ち帰りともなりかねないですからね。
ここへきて、二人ともドッと疲れがでてきたようです。やっと自由時間になったというのに、気が抜けてしまったようです。
チボリ公園から聞こえてくる歓声をよそに、ひとまずホテルへ戻ります。
16:20。
ホテルで夕寝です・・・。
20:30頃起きて、夜の街へ出てみます。
といっても、20:54でこの明るさです。
北欧最後の夜だというのに、また市庁舎前広場へ行ってホットドッグです。
結局この日は収穫ゼロ。
明日に賭けましょう。
(つづく・・・)